
犬が 銀杏を 食べた・ 踏んだら1粒でも 危ない 理由と、 殻・ 果肉・ イチョウの 葉の 違い
銀杏は、犬には1粒でも食べさせないでください。食べた・くわえたかもしれないときは、量にかかわらず動物病院に電話してください。
秋の散歩道。イチョウの木の下に、つぶれた黄色い実が落ちていることがあります。あの独特のにおいのもとが、銀杏(ぎんなん)です。人でも食べすぎると中毒を起こすことがある食べもので、散歩中に拾い食いした犬の報告もあります。
もう口にしてしまった方は、先に1章へどうぞ。
🏥 犬が 銀杏を 食べた・ く わえた・ 踏んだら、 今すぐ する こと
結論から書きます。銀杏を食べた・かじった・くわえたかもしれないときは、量にかかわらず、症状が出るのを待たずに動物病院へ電話してください。夜なら、夜間救急の動物病院に連絡しましょう。
こんなとき / すること
- 散歩中に拾い食いした・落ちていた銀杏を食べた
- すぐ動物病院に電話
- 殻ごと飲み込んだ
- すぐ電話。中毒のほかに、殻が胃に残ることもある
- くわえた・舐めた・果肉だけかじった
- 口の中に残っていれば無理のない範囲で取り出し、電話で相談。「少しだから」と自分で決めない
- 茶碗蒸しや炒り銀杏など、調理した銀杏を食べた
- すぐ電話。加熱しても、中毒を起こす成分は残る
- イチョウの葉を食べた
- 電話で相談
- 踏んだ
- 帰ったら足を洗う(5章)
電話の前に、次のことをメモしておくと話が早く進みます。
メモすること / 例
- 何を
- 「道に落ちていた銀杏」「炒り銀杏」。殻つきだったか、割れていたか、果肉がついていたか
- いくつ
- 分かる範囲で。「分からない」も大事な情報
- いつ
- 「散歩の途中、30分前」など
- 体重
- ふだんの体重
残っていた実や吐いたものがあれば、袋に入れて持って行きましょう。
🔬 銀杏は どこが 危ない? 中身・ 殻・ 果肉・ イチョウの 葉
道に落ちている銀杏は、外側からやわらかい果肉、かたい殻、中の実(人が食べる部分)の3層になっています。

部分 / 危ないこと
- 中の実(食べる部分)
- 中毒を起こす成分が入っている。加熱しても残る
- かたい殻
- 消化されにくく、胃に残ることがある
- 果肉
- 人では、肌がかぶれることがある成分を含む。においが強い
- イチョウの葉
- かぶれる成分が少し含まれる。犬が食べたときのことは分かっていない
中毒の成分は、4′-O-メチルピリドキシン(ギンコトキシンとも呼ばれます)という物質です。体の中ではビタミンB6とよく似た形をしていて、B6のはたらきを邪魔します。B6は、興奮した神経を落ち着かせる物質を作るのに欠かせないビタミン。これが足りなくなると、神経が興奮しすぎて、震えやけいれんが起こります。

「茹でたら大丈夫?」と思うかもしれません。茹でたり電子レンジで温めたりすると成分の形は変わりますが、変わったあとの形でもけいれんを起こすことが、薬学の研究で確かめられています。茶碗蒸しや炒り銀杏も、生の銀杏と同じに考えておくと安心です。
⚖️ 犬が 銀杏を 1粒 食べても 大丈夫?
犬が銀杏を何粒までなら大丈夫かは、分かっていません。だから答えは「1粒でも食べさせない」です。
犬の銀杏中毒は報告がとても少なく、獣医師の論文でも、犬の中毒量は「不明」とされています。人でも、子どもに起きやすいことが報告されています。「これくらいなら平気」と言える線は、どこにも引かれていません。
⏱️ 銀杏中毒の 症状は? 何時間で 出る?
2023年、福岡の動物病院から、散歩中に銀杏を拾い食いした犬の例が報告されています。銀杏中毒が疑われたケースです。
14歳のその子は、散歩で落ちていた銀杏を少なくとも何個か食べ、約3時間後に足が震えはじめました。病院に着いたときには、自分で立てず、ぼんやりしていました。ビタミンB6などの治療を受けて回復しましたが、散歩からたった3時間で、立てなくなるほどの症状が出ています。
報告された犬に見られた様子です。
- 吐く
- 足が震える
- ふらつく、自分で立てない
- よだれが多い
- ぼんやりして、反応がにぶい
- 目の黒いところ(瞳孔)が大きい
人の銀杏中毒では、けいれんが起きることもあります。
症状は、食べてから何時間かたって出ることがあります。症状が出るのを待つ必要はありません。食べたと分かったときが、電話のタイミングです。
秋の散歩のあと、しばらくしてから急に震える、吐く、ぼんやりしている。そんなときは、銀杏を口にしていなかったか、思い出してみるとよいでしょう。
🐾 銀杏を 踏んだら? 帰ったら 足を 洗う
銀杏の果肉には、人の肌がかぶれることがある成分(ギンコール酸)が含まれています。犬の足でも同じことが起きるかは分かっていませんが、においも強く残ります。踏んだ日は、帰ってから足を洗ってあげましょう。

- ぬるま湯で、指の間まで洗い流す
- 洗う人は、素手で果肉に触らないのがおすすめ(手袋があると安心)
- 洗ったあとは、指の間までよく乾かす(肉球ケアの記事も参考に)
- 赤くなる、かゆがる、足をしきりに舐めるときは、動物病院に相談(足を舐めるのはなぜ?)
🍂 散歩中の 銀杏の 拾い 食いを 防ぐには
イチョウは公園や街路樹でよく見かける木です。散歩コースから外せないことも多いので、歩き方で守りましょう。

- 実がなるのは、雌の木だけ。あの独特のにおいがしたら、足元に銀杏がある合図
- 人がよく通る道の銀杏は、踏まれて殻が割れ、中身が出ていることがある。報告された犬が食べたのも、散歩道の銀杏だった
- つぶれた実が多い場所は避ける。通るときはリードを短く持ち、地面に鼻を寄せたら止める
- 家で銀杏を調理するときは、殻をむくそばに犬を近づけない。床に落ちた実はすぐ拾う
- 黄色いイチョウと一緒に写真を撮るなら、実の落ちていない並木を選ぶ(うちの子を可愛く撮るコツ)
犬に危ない食べものは、ほかにもあります。ぶどう、玉ねぎ、チョコレート、キシリトール、アボカド、コーヒーやお茶もまとめています。
秋の散歩で拾わせたくない実は、銀杏だけではありません。どんぐりを食べたときのことは別の記事に、栗によく似たトチの実の見分け方は栗の記事にまとめています。

💬 よく ある 質問
危ないと考えてください。加熱すると中毒の成分の形は変わりますが、変わったあとの形でもけいれんを起こすことが確かめられています。炒り銀杏や炊き込みごはんの銀杏も同じです。生の銀杏と同じように、食べたら動物病院に電話してください。
様子見はしないでください。吐いたもの以外に、胃に残っていることがあります。報告された犬も、吐いたものの中の銀杏は1個でしたが、実際にはもっと食べていました。症状は何時間かたってから出ることもあります。
たまたまだった可能性があります。犬で何粒から危ないかは分かっておらず、次も平気だという保証はありません。あげない・拾わせないのがいちばんです。
葉にも、かぶれる成分が少し含まれています。犬が葉を食べたときにどうなるかは分かっていないので、「葉っぱだから大丈夫」と自分で判断せずに、動物病院に電話で相談してください。落ち葉と一緒に銀杏を口に入れていないかも、見ておくと安心です。
実は、よく分かっていません。獣医師の論文でも、犬は銀杏の味やにおいを好まないのかもしれない、としつつ「詳細は不明」とされています。ただ、散歩中に拾い食いした犬の報告はあります。「くさいから食べないだろう」と思わずに、拾わせないのがいちばんです。
実のなるイチョウの下では、落ち葉の中に銀杏が隠れていることがあります。飛び込んだあとに口をもぐもぐしていないか、足に果肉がついていないかを見てあげると安心です。遊ぶなら、実の落ちていない場所を選ぶと銀杏の心配が減ります。落ち葉そのものは食べさせないでください。
📚 出典・ 参考
この記事は一般的な情報をまとめたもので、獣医師の診断・治療に代わるものではありません。誤食のときは、この記事に戻るより先に動物病院へ連絡してください。
- 藤 将大ほか(2023)「銀杏中毒を疑った犬の1例」日本獣医師会雑誌 76: e304–e308——散歩中にイチョウの木の下の銀杏を複数個食べた14歳の犬が、約3時間後に足の震え、受診時によだれ・瞳孔の散大・傾眠・起立不能。ビタミンB6製剤などの治療で回復。犬の銀杏およびMPNの中毒量は不明。MPNは殻の内部の可食部に含まれ、踏まれて可食部が出た銀杏が症状に関わったと考えられる。吐いたものの中の銀杏は殻に覆われた1個で、消化されずに胃に残っていたと推察。ビタミンB6は抑制性の神経伝達物質GABAの合成に必要。イチョウは公園などで普通に見かける木
- 小林大祐(2019)「ビタミンB6欠乏症を引き起こす銀杏中毒に関する研究」薬学雑誌 139(1)——銀杏の中毒原因物質は4′-O-メチルピリドキシン(MPN)で、ビタミンB6の作用を妨げてけいれんを起こす。茹でる・電子レンジで温めると配糖体(MPNG)の割合が増えるが、MPNGもマウスでけいれんを起こし、体内でMPNに変換されうる。銀杏中毒は子どもで起きやすいと報告されている。イチョウ葉エキスにもMPNが含まれる
- Lepoittevin JP, Benezra C, Asakawa Y(1989)「Allergic contact dermatitis to Ginkgo biloba L.: relationship with urushiol」Arch Dermatol Res 281(4):227–230——イチョウの果実の主なアレルゲンはギンコール酸と考えられる
- Hausen BM(1998)「The sensitizing capacity of ginkgolic acids in guinea pigs」Am J Contact Dermat 9(3):146–148——イチョウの果実は多くのアレルギー性接触皮膚炎を起こしてきた。葉にも少量のギンコール酸が含まれる
- DermNet「Ginkgo biloba」——アレルギー性接触皮膚炎は、とくに雌の木の果実と種で報告されている。アレルゲンはギンコール酸
- 岡山理科大学 植物雑学辞典「イチョウ(ぎんなん)」——秋に果実が落下する、果肉には悪臭があり、かぶれる人もいる、雌雄異株
- Pet Poison Helpline「Salt Is Toxic To Pets」——塩・塩水は塩中毒を起こす危険が高く、動物に吐かせる目的で使ってはならない



